Architecture & Interior
和菓子 甘果
古い友人が山形市内で和菓子店を始めることになった。その店舗内装の設計・施工を行なった。
友人の作る和菓子は繊細で、素朴な可愛らしさがある。
東京で学び、関西で修行を積んで故郷山形に帰ってきた友人は、開業までに2年ほど充電期間を設けた。その期間は、和菓子職人として故郷を見つめ直す期間となったようだ。友人の手からつくられる故郷の菓子。これからどんな進化をしていくのか見届けたい。
事業計画の相談を受けることから仕事がはじまり、テナントや資金が決まる段階で具体的な内装の計画に着手した。既存内装の状態に囚われすぎないように、可能な限り余裕のある工場(こうば)にすることを考えた。その分販売のスペースは最小限のものとなった。菓子職人の1日を想像する。目に見えないたくさんの工程とそれに費やす時間がある。工場はそこに働く人も道具も材料も、のびのびとした健やかな状態であってほしいと考えた。
そのため、販売のスペースは簡素なものになっている。特に大工工事は十分な手間をかけたとは言いづらいところがある。その埋め合わせではないが、新設した壁面には友人が選んだ土を腕利の左官屋に塗ってもらった。商品が並ぶカウンターは家具屋さんによるもので、地場の栗材をブックマッチに剥ぎ合わせ、見事に仕上げてもらった。
店名・甘果の「果」の字はおそらく果実の果だろう。「果」は他にも結果の果、因果の果でもある。「はて」とも読む。
「その社会が建築をつくる」という論考が物議を醸した時代が昔あったらしい。私たちはその50年後の結果に今立っているのだろうか。それとも未だその渦中で新しい回路を必要としているのだろうか。もちろん田舎の大工にはとてもじゃないが扱いきれない話題である。
小さな店内ではあるが、左官屋と家具屋の手仕事によって友人のつくる菓子に花を添えることができた、気でいる。是非一度立ち寄って、手仕事の菓子を持ち帰り、自宅で楽しんでもらえたら幸いである。