Architecture & Interior
向山のメゾネット
マンション内装改修の木工事の施工をした、独立後初めての仕事である。施工の多くを施主自身が行いながら、木工事の一部分を手伝わせてもらった。仕上げのほとんどは施主自身の手によるものである。
初めての仕事であった。私のなかでそれまでバラバラに存在していた、作ること、働くこと、生活を営むこと、それらがどのように繋がり得るか、ということを考えるきっかけとなった現場である。
施主の亀岡真彦さんは大学時代の先輩でもある。高台にあるその部屋のベランダからは広い川を挟んで都市部の風景が見える。細長い平面、ベランダの反対側の窓の先には緑が混じった、少し古びた、山の麓の住宅地が見える。川風の抜ける、トンネルのような、筒のような場所に彼は住まいを設けた。そこは実際的な都市部へのアクセスという点においても、いくつかの選択肢を持てるような立地である。若い建築家にふさわしい場所のように感じられた。メゾネットの下階はしばらくの間はアトリエになり、上階には光と風の抜ける住まいがある。暮らすことも、働くことも、灯を絶やさないことが大切なのかもしれない。そんな思いが先輩の後ろ姿から見えた気がした。