Architecture & Interior
この山道を行きし人あり
山形市の中心市街、七日町に位置するとんがりビルは2016年にオープンした、山形のリノベーションシーンの先駆けとなったビルである。
その一階店舗の改修工事。店舗の奥にはギャラリーがあり、手前にショップとカフェが併設。ファサードや腰壁には県産杉材が使われた。造り付けのベンチやU字型のカウンター、ディスプレイ什器の制作も行った。
この工事は干田正浩建築設計事務所による設計、アカオニデザインのディレクションによって進められた。荒大工の施工の中では比較的大きな規模の工事と言うことができる。全体の施工管理はマルアールが取り仕切った。
県産材が多く使用された。これを言い換えると一般流通品していない材木も多く扱った、とも言う事ができる。一般流通していないものを扱うということはどういうことか。詳しく記すと長くなってしまうので手短に説明すると、木はもともと山に生えており、丸太なのであり、かつナマモノでもある。それが、建物や内装を作る「材料」と呼ばれる状態になり施工者である私たちの手に届くまでには、あまり知られていない、たくさんの工程がある。
一般流通=大量生産だとすれば、そうでないものは特注品と呼んでも良いかも知れない。それらがモノとして成立するには、製材業者と施工者・大工との間での綿密なやり取りや役割分担が必要になる。そのようなコストのかかる調整業務がマルアールの丁寧な管理のもとに行われ、工事が進められた。均質化されていない、何か語りかけてくるような材料に出会えることは大工冥利に尽きる。複雑で規模の大きい工事はそういった見えない仕事の上で進められる。
このような機会があることは施工者・大工にとって貴重な経験であり、嬉しいことである。